Rebirth

 ある朝、フランソワーズがジョーの部屋のカーテンを開けながら、
「おはよう、ジョー。もう朝よ」
 と声を掛けたが、いつもだったら、
「おはよう、フランソワーズ」
 と返事が返ってくるはずだったが、返事がかえってこない。それに訝しんだフランソワーズは振り向き、ジョーを揺さぶって起こそうとした。
「ジョー、起きて!」
 しかし、ジョーの体は少し冷たくなっていた。
 
「博士!ギルモア博士、大変です!直ぐに来て下さい。ジョーが!ジョーが全く起きません!」
「なんじゃと!」
 急いでギルモア博士達はジョーの元に向かった。
 
 一斉に
「ジョー!」
 と呼びかけているが反応せず…。
「一体どういう事だ」
 と困惑している面々。そこに
「仮死状態だよ…」
 とイワンが話かけてきた。
「ジョーの魂は此処にはない。ここにあるのは肉体のみ…」
「ジョーは目が覚めるの?」
「解らない。運を天に任せるしか…」
「そんな…」
 誰もジョーの傍を離れるものはいなかった。
 
「此処は、何処?僕は確か研究所の自分の部屋に寝ていた筈…」
 ジョーは自分の格好を見る。パジャマでなく普段着にしている服だった。そこに着物姿の女性が歩いてきた。
「あら?珍しいわね。ここに人が来るなんて…」
「あの、此処は一体何処なんですか?」
「此処は狭間の世界。現世で気がかりや、やり残しがあるなどがある人が来る場所…」
「僕は帰れるのですか?」
「解らないわ。」
「あなたはどうして此処に?気がかりとは?」
「私には息子が居たの…。あの子の事がとっても気掛かり…。せめて愛してると伝えてあげたい。そして育てて上げなくてごめんなさいと」
 ジョーは、もしやと思いつつ話を聞いていた。ひとしきり話が終わり、
「ここは貴方みたいな生きている人が来てはいけない場所…。さあ、元の世界にお戻りなさい。大事な人達が待っているのでしょう」
 ジョーの耳には仲間たちの戻って来いと言う声が聞こえてきた。
「そうですね。そうします。有難う、お母さん。やっと会えた…」
 その声に女性は吃驚し、涙を溜めて
「ジョー、貴方は知って…」
「最初は解りませんでした。話を聞いているうちにそうじゃないかと…」
「そうだったの…」
「まさか僕のせいでこの場に留まってるじゃないのですか」
「…」
「だったら、もう大丈夫です。おやすみ下さい。今まで守ってくれて有難う。お会い出来て本当に良かった。」
 体が薄くなっていくジョー。
「こちらこそ有難う」

 寝覚めは唐突にやって来る。
 
「ジョー」
 と叫んでいるうちに目が覚めた。
「ジョー」
「みんな…」
「心配したんだぞ…」
 フランソワーズはジョーの目元の涙に気づく。
「ジョー、一体どうしたの?」
「ううん、何でもないよ。」
「そう」
(お母さん。今僕には素晴らしい仲間たちと共にいます。だから心配しないで…)
 それを見たイワン。
(ジョーは母親に会ってきたのか。とりあえず良かったと思うべき。なんだね)
 
 互いに思い合ってる親子の物語であった。

終わり